Web > SEO

SEO辻正浩のブログ

DMCA(デジタルミレニアム著作権法)で権利を持ったページが削除

デジタルミレニアム著作権法、DMCAをご存知でしょうか。 米国の法律で、特にデジタルコンテンツにおいて著作権侵害されたものの流布を防ぐためのものです。詳細はWikipediaなどを御覧ください。

このDMCAに違反とされたコンテンツに対して、Googleは検索結果からの削除対応を行っています。

削除状況は「Google透過性レポート」として詳細が公開されていますので興味がありましたらご覧ください。レポートでわかる通り、非常に多くのコンテンツが削除されています。

当然ながら著作権侵害は大きな問題です。それに対してGoogleがこのように対策を行うこと、そしてその詳細情報を公開していることは素晴らしい事でしょう。

しかしこの著作権侵害の訴えは、特に2015年の夏からはその数が一気に増え、直近では1週間に1500万以上のURLに対して削除リクエストが送られています。 DMCA侵害の訴えが増えている今、ひとつ恐ろしいことが発生しています。

問題無いコンテンツの検索結果からの削除

このGoogle検索結果をご覧ください。 dmca-0 デジタルミレニアム著作権法にもとづいて削除されたURLはこのように検索結果から排除され、何らかのページが削除されたことが分かります。

ではこれで何が消されたのかを調べてみますと、このページでした。 dmca-1 よくURLを御覧ください。このページは、TVアニメ「Free Eternal Summer」のニコニコ動画による公式配信ページなのです。

他にも多くの公式に許諾を得たページが著作権侵害として削除されています。こちらは「東京レイヴンズ」の公式配信ページです。 dmca-2

ニコニコ動画の公式配信ページを調べてみますと、2015/12/20現在、下記のページがDMCA侵害として検索結果から削除されていました。

これは、ニコニコ動画だけではありません。 DMCA-3 このページは、TVアニメ「SHIROBAKO」公式サイトのキャラクター紹介のページです。 公式サイトのページが、「著作権違反」として検索結果から消されています。

10分ほど調べてこの量です。本来は問題ないページであるにも関わらず消されているページの量は相当のものでしょう。

消されているのは大手サイトや公式サイトだけではありません。引用の範囲であって著作権上は問題無い個人ブログの記事も当然消されているのです。

どうしてこの問題が起きるのか?

どうして、著作権上問題が無いページ、そして公式サイトのページまでもが「著作権侵害」として検索エンジンから消されるのでしょうか? 正しい所はわかりませんが、下記のような事情だと考えます。

米国には「DMCA申請代行業者」が存在しています。そこが大量のDMCA侵害申請を送信しているようです。

DMCA侵害の申請はそれなりの手間がかかります。特に有力なコンテンツを持っているコンテンツホルダーの場合、毎日のように増え続ける著作権違反コンテンツの著作権侵害を監視・削除申請を出し続けるのは現実的ではありません。その結果、代行業者に委託する事はあるでしょう。

このあたりは米国の制度ですので私も詳しくはわかってはおりませんが、先に紹介しましたSHIROBAKO公式ページが検索結果から削除されているのは「Japan Creative Contents Alliance LLC」という団体が権利を主張して「Remove Your Media LLC」という代行業者に委託して申請されたものです。 自分たちが日本のコンテンツの権利を持っていて他のWebページはDMCA侵害と主張する米国の団体がいくつかあります。これらが日本の権利者から権利行使の許諾を得た団体なのか、それとも何か事情があるのかは私は調べていません。 しかし日本のコンテンツについて何らかの権利を主張する米国の団体が、代行業者を通してDMCA侵害を訴えた結果、日本でもそれらが検索できない状態になっている事は確かです。

そして、それらの権利者から依頼を受けた代行業者ですが、数万のDMCA侵害申請を定期的に出している所もあります。一部では適当に申請を投げているとしか思えない業者もあります。 現実的に世界中の多様な言語を全て精査して申請することは難しいでしょうが、適当にURLにブランド名を含むページを一括で著作権侵害として申請しているように思われる団体さえあるのです。

DMCAに基づく削除リクエストがGoogleに送られると、全てのページが消えるわけではありません。一定数のページはリクエストが却下されています。 しかし現状、1週間に1500万以上のURLに削除リクエストが送られています。削除リクエスト送信側も受信・対応側も自動化しているのでしょうが、毎日200万URL以上の申請にそれが本当に著作権侵害なのか、それとも正式に許諾を得ているか、騙りではない公式サイトなのかを調べる事は、現実的に難しいでしょう。機械学習による自動化なども行われているでしょうが、それが100%の精度とならず、誤った削除があるのは仕方がない事と思います。

そのような結果、著作権上問題が無いページも消える事になっていると私は推測します。

実際にはこのDMCAで検索されなくなるページのほとんどは実際に問題あるページです。実際に著作権上問題が無いにも関わらず消えているページはごく稀です。そして、映画・アニメ関連以外ではあまり見られません。 しかし最近のDMCA侵害申請の増加量を考えますと、この問題は今後更に様々なジャンルへの拡大とともに増えていくのではないでしょうか。

権利者側が注意するべき事

ここまで、膨大に増えたDMCA侵害申請によって本来は著作権上問題無いページですら検索エンジンで探せなくなる状況が発生していることをご紹介しました。

では、実際にこれにどのように対応するべきでしょうか。 抜本的な対策ではありませんが、まずは下記の3つを注意してください。

Google Search Consoleから異議申し立て

これが一番の対抗策です。 何らかのDMCAの訴えにより自分のサイトから特定のURLが削除された場合、Google Search Consoleに無料登録さえしていれば、この連絡が届きます。 dmca-4

この通知が届いても、直ちに正しく異議申立てを行いますと問題無いコンテンツだった場合には検索結果に復活します。 異議申し立てを多く行っていく事で、問題が無いコンテンツに対してDMCA申請をする業者の申請が通りづらくなるかもしれません。

まずは、Google Search Consoleに登録していないサイトがありましたら直ちに登録してください。その上でDMCA関連のメッセージに注意される事をおすすめします。

権利の委託時には細心の注意を払う

「本来の著作権保持者が海外の著作権管理のために海外業者への委託を行う」ことが発端になるケースが多いように思います。

海外の著作権違反に対抗するならば、委託を行うのは仕方がない事かもしれません。しかし、その委託した業者が正しく活動してくれるのか、日本の公式コンテンツも削除してしまうような業者ではないのか、ということは確認しておくべきでしょう。

URLを注意

現段階の微妙な海外DMCA代行業者は、申請するURLを探すのにURLで検索しているケースが多いようです。URLには著作権物の名前を入れておかない方が、どちらかといいますと安心でしょう。

微妙な対策ではありますが、現状発生しているリスクはこれで避けられるケースが多いように思います。

コンテンツホルダーが海外DMCAに対応するために

著作権上問題がないコンテンツがDMCA侵害として削除されるケースと、現段階でできる対応について説明してきました。

非常に微妙な状況です。そしてこの微妙な状況は今後拡大するものと思います。 こんなことになっているのはどこが悪い事なのでしょうか?

著作権管理を精度の低い代行業者に委託する(もしくはそれを放置する?)日本のコンテンツホルダーが悪い?

精度の低いDMCA侵害の申請を大量にするDMCA申請代行業者が悪い?

何百万のURLであっても完璧な精査をせずに通してしまうGoogleが悪い?

そもそもDMCA侵害とされたURLが日本の検索結果から削除される事が悪い?

私にはわかりません。ただ絶対に正しいことは「著作権侵害は悪」ということです。

しかし多くはスパマーの手によって毎日何百万と著作権侵害コンテンツが新規生成されている現状、そしておそらく今後も増え続けることを考えると、現状の仕組みでは完璧な対策はありません。著作権上問題無いコンテンツが削除されるリスクを完璧に避ける事は不可能なのでしょう。 よく言われるように、著作権と検索エンジンの関係は破綻し始めているのかもしれません。

著作権侵害コンテンツの検索結果からの削除は、ここ数年で一気に注目されるようになりました。この大きな変化に対してどのように対応していくか、Googleや関係する機関は検討を進めている所でしょう。おそらくこの問題は今後抜本的な解決があるのかもしれませんが、難しい問題ですので近い事ではないように思います。

この過渡期に自分の持っているコンテンツを多くの人に伝え続けるためには、注意を払って随時対応していくしかありません。 どうぞご注意ください。