近況と、チームで行うSEOサービス


昨年5月末に株式会社JADEを始めますという記事を書いてから1年ちょっとが経ちました。

3人で始めたJADEも今は8名。
体制も整い始め、さぁここからというタイミングでのコロナ禍となりましたが、関わらせていただくWebサイトも増え、順調に仕事を進めています。

JADEを立ち上げる際にいくつか記事などで書きましたが、私には冒険でした。
2011年まで株式会社アイレップのSEOチーム十数人で仕事をしていましたが、独立してから8年間、多くの期間一人で仕事を進めていましたので、チームでの仕事に戻る選択が正しいのか、うまくやっていけるのか不安でした。

一年経ちまして思いますが、それは正しい選択でした。
Webマーケティングは一人でも十分な価値が出せる仕事です。実際わたしは一人でも多くの有名企業・大手サイトの改善に関わってきました。基本的に短期で仕事は受けず継続したサポートをしていますが、8年間お客さまから解約を希望されたのは一件しか有りませんでしたので、良いサービスを提供できていたのではないかと思います。
個人的に成長も出来ました。独立した段階では片手で数えるほどしか巨大サイトのSEOの経験は有りませんでしたが、8年間で非常に多くのサイトに関わり、巨大サイト・複雑なサイトのSEOでは日本一の経験と知見を持っていると自信を持って言えるようになりました。

そのように一人でうまくやれていましたのにチームを組む事にした理由は、SEOの変化にあります。
SEOを行う上で、検索エンジンの知識以外の知見の必要性がどんどん増え続けています。それを一人でカバーし続けるのに限界を感じることが増えまして、チームを組む事で限界を超えられるのでは?という期待があったのですが、その期待は正しかったと思えます。

この記事では、一年間の近況ご報告と合わせて、SEOサービスのチームについて少し書いてみます。

 


複雑なWebサイトへのSEOサービス

「SEOは属人的」と言われますが、それは全てにおいて正しいわけではありません。

一般的なWebサイトのSEOでは、多くをパターン化できます。パターンをルーチンに落とし込むことで、属人性の最小化が可能です。多くの大きなSEO会社ではそれを試みて、経験が数年の人でもSEOサービスを提供できる体制を作っています。

ただ、巨大サイト・複雑なWebサイトのSEOは話が変わります。複雑なWebサイトのSEOは全くパターン化できません。
Amazonと楽天市場は同じECサイトですが、その必要なSEOに共通要素はわずかしかありません。TwitterとFacebook、同じく大手ソーシャルメディアといっても、そのSEOに共通した施策はほとんど無いでしょう。
複雑なWebサイトではパターンに出来ることはどんどん減り、そのサイトに合わせたSEOが必要になります。ここ数年私が関わらせていただいている大半はそのようなWebサイトでした。

そのようなSEOは、どうしても属人性が強くなります。サイトによって都度異なる複雑な経験を共有することは難しいものです。更にその経験・知見はどんどん変わり続けています。それをチームで共有し続けることは絶望的に難しいものです。複雑なサイトのSEOを提供するにあたって一人での仕事は都合が良くことが多いものでした。

ただ、一人が良い事ばかりではありません。Googleの進化に伴ってSEOは検索エンジンの知識だけでは対応出来なくなってきています。
十数年前の検索エンジンは、クローラが収集したHTML情報だけで順位のほとんどを決めていましたが、いまはありとあらゆる情報を活用しています。
様々な方法で取得したユーザの動き自体を参考にページの評価を決めるようになっています。デザイン上の要素も直接的に検索順位に影響しますし、ソーシャルメディア上の評価も単にリンクという形以外での活用も目立ちます。画像や動画の内容も理解するようになり、位置情報などユーザ自体の動きも大きく影響するようになっています。

そのように検索エンジンが見る領域が増えていることは、SEOのために必要な領域がどんどん広がり続けることを意味します。

私がSEOを教わった渡辺隆広さんのサイト、SEMリサーチの「SEOの学び方(新卒入社者向け)」という記事にこのような言及があります。 

SEOというのは「検索に配慮できるWebの汎用的なスキル」であるので、次にあげる領域の少なくとも1つについて理解がなければ、SEOのスキルは何の役にも立たないということです。SEOは優れたWebサイトを継続的に運用管理することでもあるので、隣接領域についての理解なく学びを進めても小手先のテクニックに終始してしまい、事業推進という本質を見失ってしまいます。

・Web制作・開発全般:広く浅くでいいので、新規Webサイトの立ち上げ段階から、実際に公開に至るまでの業務フローと各々の業務の理解があること
・ユーザビリティ/UX:ユーザーにとって使いやすいWebデザインや構成要素について、合理的な理由に基づいた課題の指摘と改善施策を提示できること
・Web解析:Webのアクセスデータを分析して、課題の抽出と改善施策を提案できる能力
・コンテンツマーケティング:ターゲットとするオーディエンスの教育・啓蒙・理解をコンテンツを通じて進めながら、最終的に自社の商品やサービスを選択してもらうように促すマーケティング全般の実務理解

言い換えると、上記いずれかのスキルを身につけて、そこにSEOの知識を融合させると、初めてSEOのコンサルティングが可能になるということです。

 www.sem-r.com

 

この指摘はその通りと私も思います。

いまのSEOには検索エンジンの知見に加えていくつかの領域の知見が必要です。
それは、渡辺さんの書かれている「Web制作・開発全般」「ユーザビリティ/UX」「Web解析」「コンテンツマーケティング」に加えて「ソーシャルメディア」をあわせて、5つの領域が特に関係が強いと私は考えます。

複雑なWebサイトのSEOでもこの5つの領域を組み合わせた知識が必要です。検索エンジンの知見とこれらの領域、あとマーケティングの視点を持つ事で十分に価値あるSEOとなります。

多くのWebサイトのSEOを考えるにあたって、それらの様々な領域の知見は、そこまで高いレベルは求められません。しかし、高いレベルのスペシャリストが多く関わって複雑な意図と要件で運営されている巨大サイトでは、それぞれの領域の理解に高い水準が必要とされます。


SEOに求められる領域が肥大化している状況で、価値あるSEOを提供するのは非常に難しくなりました。

しかしSEOは必要とされ続けています。

進化しきった検索エンジンがあればSEOは不要になります。しかし残念ながら完成された検索エンジンはありません。すべての検索エンジンは発展途上で、多くの欠陥を抱えています。
それらの欠陥は、特に最新の技術を用いた複雑なサイトや巨大サイトにおいてよく問題を起こします。普通に良いコンテンツを提供してもうまく検索されない場合がいまだに多く発生してしまいます。

検索エンジンは急速に進化を続けていますが、wwwに使われる技術や表現の進化はそれを凌駕しており、特に最先端のサイトにSEOの問題が発生しやすい状況が続いています。

そのような問題が発生しないようにするのがSEOの重要な仕事です。そのために必要とする領域が増えてもすべてに追いつこうとしていたのがこれまで私がやっていたことでした。

そして、それをチーム化することでうまく行けるのではないか、というのがいまの私達の取り組みです。
それぞれの領域で高い専門性を持った者が、その知見を検索エンジンという軸で組み合わせることで、複雑なSEOの問題に対応すること、それをいま進めています。

わたしはSEOについては自信があると言えるようになりましたが、その細かい領域には得意苦手があります。2019年までは、得意ではない分野が必要になる度に焦って学びつつ必死に対応していたものです。

それが今年は変わりました。SEOに加えてWeb解析に深い知見を持つ村山に解析面でサポートしてもらったり、コンテンツマーケティングの側面で大きなサポートが必要なときには日本のコンテンツマーケティングのごく初期から関わり続けている伊東、広告が大きく関わるときは小西、とタッグを組むことで、十分に自信を持って対応できるようになりました。

検索エンジンの知見を共通して持ちつつ、メンバーそれぞれが特定ジャンルに極めて高い専門性を持ち、それを組み合わせてSEOの価値につなげる」という事が、いまの肥大化しつつ変わり続けるSEOの領域を高いレベルでサポートしつづけられる唯一の方法なのではないか、とわたしは考えています。

そして、一年で感じたこととして、この形の仕事が自分の成長にも一番つながるということがあります。
一年前では全く考えてもいなかった方法で分析をするようになりました。8年間間違え続けていた事に次々と気づいて赤面することも多いですが、提案できる改善手法の幅も広がっています。
チームでの仕事の利点はサービスレベルの向上よりも成長速度という面で大きいのかと改めて気づきました。

いま検索エンジン周りの総合知識では、社内で私が最も優れていますのでそれをチームに広げつつ、個人としてもチームとしても成長していければと思っています。


近況

コロナ禍は、わたしたちにもそこそこ影響がありました。

お客さまの中には「インフラ」というべきサイトも複数あります。コロナ禍中、そのようなサイトは平時よりも情報を確実に多くの人に伝える必要がありましたので私達に求められることも大きく増えました。

その中、元々コロナ前から週に1~2日は在宅勤務をするメンバーが多かったのですが、それを早々に完全リモートに切り替え緊急事態宣言中は維持しましたので、仕事は停滞する事もあります。

私は会社の隣の建物の7畳1間に住んでいますので一人出社を続け、一年ぶりに多くのことを一人で済ます仕事に戻っていましたが、改めてチームの大切さを実感した次第です。

 

この歴史的な緊急事態の中で、インターネットに求められるものは非常に大きくなりました。
コロナ関連の症状など情報を探して悩みを解決する事だけではなく、ストレスが溜まる特殊な状況での安らぎを提供する事もインターネットに強く求められました。
そしてそれらの多くは検索で繋がっています。

この状況で素晴らしい価値を提供する様々なWebサイトの価値を多くの人に届ける役割の一部を果たせた事に、誇りに思っています。

どうかこれからも求められる役割を果たしていきたいと思っています。その役割は今後更に大きくなっていきますので。

 

最近、ワクワクする機会がどんどん増えています。関われる仕事も増えて、日本シェアもそろそろ6%に到達します。ただ、まだまだチームは未完成です。

2019年春に長山小西と私の3人で創業した会社ですが、社長の伊東、主に広告を担当する小西と2名、主にSEOを担当する私と3名、合計8人での業務を行っています。(現在、長山は常勤ではなくなりましたが様々な面でサポートしてもらっています)

非常に素晴らしいサービスを運営されている会社さまからお問い合わせを頂く事も以前より増えました。ただ、リソース不足からそのほとんどをお断りしている状況で心苦しい限りです。

どうにか早期にそれに対応できるチームに拡大して、更に日本のインターネットの価値を高める役割を果たしていければと思っています。

 


と、会社ブログのような記事にしてしまいましたが、最後くらい個人ブログらしく近況を。

こんな感じで楽しく仕事をしています。

書いてきたSEOサービスという面以外で、8年間フリーランスや社長という立場で活動した後に、社長を降りて会社に参加するのは大きい変化があるのかなとも思いましたが、思ったよりも変化ありません。安心してやりたいことを突き詰められる状況が続いていて、杞憂でした。

2011年に独立してから、このままずっと1~2名では死ぬまでは続けられないだろうなあ、いつかまたどこかの組織に入るべきだろうなぁとはずっと思っていましたが、このタイミングでの決断は正しかったと思っています。良い社長や同僚に恵まれたからでしょう。感謝しています。

いまは、仕事も生活もどこにもコロナが影響していますし、検索結果を見ても激しい順位変動が影響していますし、色々と忙しい日々です。コロナ後は特に以前のようなハードワークになっています。(会社は基本ホワイトで、出社された人がいる日でも20時過ぎには、私だけになっています)

ただ、以前よりも健康に気をつけるようになりました。リングフィットアドベンチャーに勤しんでみたり、夕食は自宅に移動して健康的に済ませたり。体重はコロナ前から8キロほど落として体も軽くなりました。

いま自分が倒れたときに迷惑を掛ける人は以前よりも増えました。そうならないように健康第一でがんばります。